『EV(電気自動車)が増えるほど税が消えていく...』ー③
(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (8803)
『「EVが増えるほど税が消えていく...」消失する約145兆円の代償ーー脱炭素の裏で低所得国が直面する”財政的自滅”へのカウントダウン』ー③
◆走行距離課税という選択肢
~(前号)からの継続アップ~
現実的な対応策として、EVに対する走行距離に基づく課税が取り沙汰されている。フランスを含む欧州各国でも議論は活発だ。車両に通信機能を備え、登録された自動車ごとの走行距離を把握すること自体は技術的には難しくないように映る。ただそれは個人の移動の軌跡が常時把握される状況への入口でもあり、運転者の抵抗感を強める恐れがある。
課税が走行履歴という変動する情報と結びつくことで、車の価値は行政の判断次第で左右されやすくなる。結果として個人が所有するよりも、税負担を調製しやすい法人が管理する形へ移行する動きを後押しする可能性もある。
走行データをどのように扱い、守るかは、なお解かれていない問題だ。プライバシーの確保や行動の把握につながる点への懸念は主要な論点として残る。また課税の水準や方法を誤れば、車両価格が高めなEVの経済的な魅力を削ぎ、購入意欲を弱めかねない。それでも走行距離課税を巡る議論は、賛否を超えて導入の時期や受け入れ方、対象の広げ方といった具体論に入りつつあるように見える。
実現は時間の問題なのか。移動という行為の価値の測り方が変わりつつある中で、この論争が続くことだけは確かだろう。
◆匿名性が失われていく移動
燃料税という、物理的な消費量に寄り掛かった徴税の仕組みが終りを迎えるということは、移動がこれまで享受してきた匿名性の高い自由が後退することを示している。道路インフラの維持費は長い間燃料価格の中に溶け込む形で処理されてきた。だが電動化が進むにつれ、国家はインフラの減価分を個々人の走行データと直接結びつける方向へ踏み出さざるを得なくなる。
この転換によって車両の基幹プログラムを掌握する企業は、実質的に徴税を支える基盤を担う存在へと近づき、官と民の力関係は大きく揺さぶられる。移動に関わる産業の担い手にとって走行データは付加価値を生むための材料にとどまらず、国家の歳入を下支えする公的な仕組みの一部へと位置付けが変わる。
市場に関わる主体は、この制度の変化がもたらす不安定さから目を背けることなく、移動がすべての確認の対象となる時代にふさわしい収益のあり方を模索する必要がある。脱炭素という後戻りできない流の陰で、国家の財政に対する統制と個人の自由がせめぎ合う局面はすでに眼前まできている。(牧野康弘 氏)
(記事出典:牧野康弘 氏(自動車ライター)/ MerKmal 202601/30 )
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