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『「潜行一千里 ILHA FORMOSA」』ー②
2026年 01月 23日
(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (8775) 『台湾の先住民族を描いた映画「潜行一千里 ILHA FORMOSA」から考えたい、世界の複雑さに対して謙虚にまること』ー② ~(前号)からの継続アップ~ そもそも「本省人」と「外省人」という概念は、「二二八事件」という惨劇によって強化された。 「二二八事件」とは、第2次世界大戦後の国民党政権(「外省人」)の横暴や腐敗に不満と怒りを膨らませていた台湾の民衆が、役人の暴行事件をきっかけに各地で激しい抗議行動を起こし、それを国民党政府が軍隊で抑え込んだ大規模な武力鎮圧事件である。犠牲者は2万人以上といわれる。 ◆「外省人か」は土足で踏み込むようなこと それゆえ「外省人」という言い方には差別的なニュアンスが含まれることもあるし、長らく台湾社会に深い亀裂を生んできた歴史的背景があることをきちんと理解する必要がある。これは、家族や仲間同士のコンセンサスがある上で、又は研究論文などで必要に応じて用いられる言葉である。例えば知り合ってすぐの台湾人に「あなたは外省人ですか?」と尋ねることは、とても敏感な問題に土足で踏み込むようなものだ。 1980年代から進んだ民主化を経て、実態としても「本省人」「外省人」といった概念ではできないことは増えている。さらには、その分断を克服しようとする李登輝の「新台湾人」や、近年の「中華民国台湾」という概念など、台湾という場所で異なるバックグランドを持つ人びとが力を合わせて未来を作っていくことを希求する有名無名の人びとの不断の努力がある。 作中(映画)では、ケガをして寝ている老婦人に、「内省人」(これも「本省人」の間違いで、訂正テロップを入れることは考えなかったのだろうか)と話しかけたり、「(二二八事件)は)ケンカしたんでしょ」と聞いたりしているが、適切ではない。「二二八事件)は前述のように、今の台湾社会に深刻な影響と分裂をもたらしている。深刻な歴史事件を作中で「ケンカ」と表現していることに驚いた。 また「本省人85% 外省人13% 原住民2%」という本作で紹介される人口構成の内訳は、「新住民」という東南アジアや中国、または他の国から労働や結婚のために移住してきた人々を無視している。 筆者(栗来)も結婚で台湾に移住したので「新住民」なのだが、台湾における私の存在は、本作では存在しないことになっている。「客家(ハッカ)」という台湾社会における主要なエスニック・グループについても無視している。「漢族」であり大半が「本省人」に含まれるとはいえ、現在の台湾のオフィシャルな統計からいえば、誤情報ともいえる。 作中では台湾を代表するヒップホップミュージシャンの一人である大支とのインタビューがあるが、ここでも問題がみられる。ここで大支(Dwagie)は「ダージー」と読む。ジーはズーに近い音である。台湾語の場合は「ドゥギー」と読み、「ダーギー」と呼ぶのはあまりにも大支の呼び方から離れている。空族がなぜダーギーと呼ぶようになったかのかは、もしかすると「Dwagie」のアルファベット読みからだと想像するが、正確な呼び方がわからないなら本人に聞くべきだったろう。 そして間違った呼称を押し付けながら、さらに「原住民」を「げんじゅうみん」と日本語読みで大支に呼びかけている。「げんじゅうみん」は日本語読みだから、通じるわけがないが、大支も困って「原住民(イエンズーミン)の話をしたいらしい」と推察した挙句、一所懸命「Aborigines(アボリジニ―)」という言葉を用いて台湾の歴史を伝えようとしている(だが実は”Aboginies”という言葉にも議論があり、徐々に置き換わって現在は原住民の英訳は”Indigenous Peaples”が標準である)。大支自身が、製作者の認識不足に不安を覚え、それを補足しようと話をしているように見えてしまう。 さらに「原住民」をどう見ているのかという問題を掘り下げたい。この作品の中には、日本語を話す原住民の方も多く出てくる。台湾が植民地(日本の)にされたことにも触れられているし、『セデック・バレ』をもとにした霧社事件の話も出てくる。それ以外にもたくさんの日本についての言及が出てくるが、なぜか製作者は日本人である自分をまったく蚊帳の外に置いているように見える。 ~以下、(次号)に継続アップ~ (記事出典:栗来ひかり(文筆家)/ 東洋経済 ONLINE 2025/11/30 )
by Gewerbe
| 2026-01-23 07:01
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Comments(1)
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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