『『TRON(トロン):日本発の知られざる世界標準OS』ー②
(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (8588)
『意外と知らない日本発の世界標準OS『TRON』は何が凄いのか?』ー②
~(前号)からの継続アップ~
◆ 『TRON』が組み込みOSとして爆発的に普及した理由は?
『TRON』が世界標準となった理由は「先進性」など数多く挙げられますが、大きな要因には「オープンさ」もあります。
TRONは、ソースコードではなくインターフェースと設計ガイドラインの集合体として設計されました。これにより異なるマイクロプロセッサに適した独自の実装が可能。仕様(※I-TRON(μITRON)などの仕様が公開されており、自由に利用可能)はオープンかつ無償で提供されていますが、各実装は開発元の判断でプロプライエタリ(独自仕様)とすることも可能です。
総じて『TRON』は先進的かつ独自性が高いOSですが、同時に柔軟性が極めて高いです。利用する企業や個人にとってカスタマイズ性も高く、独自規格のなかにロックインされたり、高額なライセンス料がかかるものでもありません。
こうしたオープンさは日本発のIT製品としては、意外と「珍しいもの」でもあります。仕様が非公開の元、厳格なライセンス管理を行い、そのアーキテクチャーの上で開発を行う事業者にライセンス料を要求するようなハードウエアやソフトウエアが国内では珍しくないためです。そうしたクローズドさとは無縁かつ技術的に優れている『TRON』こそが世界標準となったのは、日本発のITの事例として貴重かつ学びが多いものと言えるでしょう。
◆ 『TRON』が個人向けのOSとしては広がらなかった理由は?
組み込みOSとして世界標準である『TRON』には、TRONプロジェクトの一部として『BTRON(ビートロン)』が存在していました。BTRONはパーソナルコンピューター(PC)やワークステーション向けのOSとして開発されていましたが、普及に至らず。
とはいえBTRONは完成度が高く、多くのOSがコマンドライン方式だった時代に、BTRONはマウス操作によるグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を採用し、アイコンをクリックしてソフトウエアを起動する、現在のPCに近い操作性も実現していました。
では普及を妨げた要因は何だったのでしょうか。
その要因にはまずTRONの特性(オープン仕様、無償、改革自由、「主張しないOS」)は組み込みOSには適したものの、個人ユースにはアプリケーションの互換性の担保の面で、まだ時代的にマッチしなかったことが挙げられます。
当時はパソコンの黎明期でもあり、ソフトウエアは高価なものであり、ソフトウエアが複数のPCで互換性を持って使えることも重要でした。その点、BTRONは個人向けとして主流のOSではないためソフトウエアが少なく、なおかつ改変自由なため、同じBTRON搭載機でもすべてのPCで同じように動作する保証はなかった可能性があります。
この点は、今日であればクラウドサービスやWebアプリケーションが普及し、OSに依存せずプラウザ経由で多数のサービスが動くことから、気になりにくいデメリットだったはずです。時代を先取りし過ぎていたとも考えられます。
また1980年代後半の日米貿易摩擦問題で、米国の通商代表部(USTR)が貿易摩擦として複数の製品とともに『TRON』を名指ししたことも影響しているという見方もあります。
個人向けOSとしては成功したとは言い難い『TRON(トロン)』ですが、組み込みOSとしては2025年現在でも世界標準です。日本発祥のOSの貴重な選択肢として、いつの日かLinuxのようなオープンソースOSとして個人でも『BTRON』が現行のPCで再び使える日が来たら、OSの選択肢としてかなり面白いかもしれませんね。
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記事出典:スマホライフ PLUS 2025/05/13)


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