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『インコタームズ2020』ー④
 (貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (7129)

『インコタームズ2020に関する若干の解説』ー④
 ~(前号)からの継続アップ~
2.実質的な相違点について
(1)DATからDPUへの変更

(2)CIFとCIPの保険保障範囲の差異化
 2020年版では、CIFCIPの保険保障範囲に差異が設けられた。すなわち、CIFの売主には、協会貨物約款(ロイズ市場協会/ロンドン国際保険業者協会)C条件または同種の約款により提供される保障範囲を満たす貨物保険を取得する義務が課せられる一方、CIPの売主には、上記協会貨物約款のA条件または利用する運送手段に相応し同種の約款により提供される補償範囲を満たす貨物保険を取得する義務が課せられるようになった。2010年版でのCIFとCIPには等しくC条件または同種の保険取得義務が課せられていたため、このことは大きな違いと言ってよい。
 実は、2020年版作りの過程で、保険料の引上げという弊害は伴うが、買主のために売主が手配する補償範囲を拡大すべきであるとの主張がなされ、CIFとCIPの両規則ともC条件からA条件への条件の引上げが模索された。しかしながら、一方では、C条件のままでよいとする主張もあり、とりわけ相場制商品(国際性商品=commodities)などの伝統的な海上輸送を対象とする商品類を扱う関係者からは低い補償範囲を継続すべきであるとの強い意見が出された。
 ICCの起草委員会は、それらの見解を異にする関係者との協議を重ね、委員会内で慎重に検討した結果、CIFとCIP規則のそれぞれに異なる保険保障を規定すべきであると結論付けたのであった。
 もちろん、当事者の別途の合意によって、より高い水準の保険補償とすることは妨げられない。A条件の水準を満たす保険補償の取得義務が売主に課せられているCIP条件の場合でも、当事者の自由意思に基づき、より低い補償範囲の水準で合意できるのは明白である

(3)FCA規則に”船積済みの付記のある船荷証券”を含めたこと
 2020年版のFCA規則には”船積済みの付記のある船荷証券”の提供を求めており、この点は2010年版とは大きくことなる
 周知のように、FCAに基づく引渡しは、従来、売主が内陸地で物品を運送人に引き渡せば、完了するものと解されてきた。そのような引渡しの特徴を持つFCAに200年版では同時に、船積済み船荷証券の提供を認める規定が設けられたわけである。
 コンテナを用いた取引に携わる我が国を含む世界の多くの実務家は、ICCによる再三の警告にもかかわらず、FCAを使うことなく、在来船の運送に適したFOBを使用している実態がある。
 コンテナ貨物にFOBを使用した場合、内陸地で運送人に物品を引き渡した後も、本船船上に物品が置かれるまでは売主に危険が残ることになり、その間に障害が発生すれば売主が負担することになる。
 インコタームズの基本原則は、物品の引渡しと同時に危険も売主から買主に移転するところにあるため、コンテナ貨物とFOBの組み合わせは、原則から外れた好ましくない実務と解せられる。

 ICCの起草委員会はこの実務慣習の様々な理由を理解するとともに、特に信用状取引の場合には、確実に船積みがなされたことが証される伝統的な船荷証券が必要とされているために、船荷証券の発行により適したFOBの方が、FCAを用いるより便利であるという現実も理解したのであった。
 要するに、コンテナ貨物の取引にはFCAが使用されるべきとの建前がありながらもそれがなかなか定着せず、そこに信用状取引という要素が加わると、船積船荷証券を重視するFOBがより理解される実態があり、ICCはこの建前と実態との乖離にどう折り合いをつけ対応すべきかが問われることになったのである。ICCは、そのような信用状を用いたコンテナ貨物取引の現実問題に対する具体的な解答として、2020年版のFCA規則に、苦肉の策と察し得る、船積済みの付記のある船荷証券を認める規定を設けたのである。

 ~以下、(次号)に継続アップ~

(記事出典:出口尚志 氏(早稲田大学商学学術院教授) 2019/11)

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『インコタームズ2020』ー④_a0061688_333364.jpg

by Gewerbe | 2023-05-27 05:17 | Trackback | Comments(0)