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『経済安全保障の将来的視点』ー⑨
 (貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (7124)

『経済安全保障の将来的視点』ー⑨
貿易ルールとサプライチェーンから見た政治経済的考察
~(前号)からの継続アップ~

◆日本が直面する可能性のある今後の課題
 今日の世界経済において日本の相対的な存在感が低下していく中で、日本国内の問題が国際社会の批判の対象になりにくくなっていることは残念ながら事実である。
 また、日本は経済的に停滞していると言われてはいるものの、依然として1億2000万人を超える市場を有しているため、国際市場の動向を考えることなく国内市場のみに関心を向けていくだけでビジネスが可能であると考える中小企業も少なくないであろう。
 しかし、欧米諸国における国内的事情が中国をはじめとする新興国の経済的影響力の拡大と連動され、さらに新型コロナのような未知の敵との戦いが求められるようになると、様々な影響が日本に及んでくることを十分に認識する必要がある。

 以下では、広義の経済安全保障リスクの低減のために、日本が独自に対処しなければならない論点を検討してみたい。
(1)労働者の人権
 人権問題については日本企業も外国での出来事と考えず、対応を強化しておく必要がある。特に「強制労働」については、日本語で理解される言葉の意味と、欧米において「Forced Labor」と表現される内容には違いがあるということに注意する必要がある。
 英語で表現されるForced laborは、「現代的奴隷(Modern slavery)」の一部として、強制結婚(Forced marriage)や児童労働(Child labor)などと並んで回避すべきものとして捉えられている。さらに「奴隷」「強制」という語も、「一定の場所に留まることを強制され」「身体的自由を奪われて」実施されるものというかつての奴隷労働の範囲を大きく超えて、その労働を選んだこと自体は労働者本人の意思によるものであったとしても、実質的に長時間、過酷な労働に従事することを強いられる状況にある場合は、全て「現代的奴隷」の中に位置付けるという解釈が一般的なものとなっている。

 Walk Free Foundationが発行する「The Global Slavery Index」の最新版である2018年度版レポート(Walk Free Foundation 2018a)及びそのアジア・太平洋版レポート(Walk Free Foundation 2018b)では、日本の現代的奴隷の比率が調査対象全167ヶ国のなかでも最低の比率であるとされているが、それでも2016年時点で37000人が現代的奴隷下にあるとされている。
 中でも、遠洋漁船の労働者、特に外国人労働者の労働環境や、技能実習生の扱い、留学生アルバイト環境などが問題点として指摘された。
 特に技能実習の分野においては、食品加工、建設、機械、水産物、農業、アパレル、介護(インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定における受け入れ対象)の分野に関して現代的奴隷の危惧が示されている
 さらには、日本が海外から輸入している品目のうち、「ラップトップ、デスクトップコンピュター、携帯電話」「アパレル」「水産物」「ココア」「木材」において、輸出国の生産時に現代的奴隷が用いられている恐れがあると警告されている。

 これらの指摘のうち、技能実習制度によって日本に入国し日本企業において就労している外国人の人権問題に特に注意しておくべきだろう。技能実習生たちが現場の過酷な労働から逃げ出さないように受け入れ先企業や受け入れ団体がパスポートを預かるといったことがしばしば指摘されている。
 また、技能実習制度においても最低賃金が適応されているとはいえ、長時間労働中で実質的に最低賃金に満たない形で就労がなされているというようなこともある。
 さらには、技能実習生が小さな部屋に複数人で居住するといった住環境なども含めて、実習生の陰険が問題となる可能性があり、こうした問題は、すでに国際的な人権団体から長く指摘されてきたことである。

 新型コロナの影響で、技能実習生の入国が困難となり、中小製造企業や農業の現場において人手が足りないという事態が発生しているが、今後は中国をはじめとする途上国の工場で働く労働者の賃金や労働環境に世界の関心が向けられてきた場合、日本における技能実習の労働環境についても改めて厳しい視線が向けられ、人権問題に十分な対処をしていない企業はグローバルなサプライチェーンから排除されてしまう可能性がある
 こうしたリスクは、近年、急速な広がりを見せるフリーランス型の労働者(いわゆる「ギグワーカー」の労働環境が、長時間、過酷なものとなっているとのことで、ディーセント・ワーク(働きがいのある、人間らしい仕事)の観点からは、労働者の人権が確保されてないということにつながる恐れもある。

 日本では、「値上げ」をしないことが企業としての責務であるとの認識が長く続いてきたが、日本企業がコスト削減重視の戦略を重視し過ぎると、それがサプライチェーンの中で労働者に対する暗黙の強制労働を強いることに繋がりかねない。
 フリーランス契約など労働者が好んで選択した労働契約でも、結果的に人権保護が確保されていないと、新彊綿の問題と同様に現代的奴隷と分類され、そうした労働を活用した企業は国際的なサプライチェーンから排除される可能性がある

 ~以下、(次号):「(2)ジェンダーの平等」に継続アップ~

(記事出典:小田正規 氏(日本大学国際関連学部准教授) 2022/10)

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by Gewerbe | 2023-05-23 05:20 | Trackback | Comments(0)