(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (7122)
『経済安全保障の将来的視点』ー⑦
ー貿易ルールとサプライチェーンから見た政治経済的考察ー
~(前号)からの継続アップ~ SDGsの影響力の拡大
◆(2)働きがいと「貿易と労働基準」
労働者の権利(労働時間や賃金、休暇、定年制度に加えて、労働組合を結成する権利など)については、国際機関である国際労働機関(International Labor Organization: ILO )が重要な役割を果たしてきた。
しかし、企業の多国籍化に伴い、複数の国で事業活動を行う企業が増加すると、各国間の労働者の権利の相違が問題となってきた。1990年代後半にWTOの場において「貿易と労働基準」の関係が注目されてきたのは、特に労働者の権利が十分でない途上国において、労働者に十分な権利を提供しないことで製品の価格を安価にする、いわゆる「ソーシャルダンピング(社会的不当廉売)」が問題視されたためである。特に児童労働者、就学期の子供たちが仕事に就く場合、賃金が低く十分な報酬が与えられない中で就学の機会が奪われていくことから、重大な問題として社会の関心を集めてきた。
また、途上国支援の文脈では、「フェアトレード」の観点から、途上国の生産者に適切な対価を支払った製品の輸入が重要であるということが浸透するようになった。先進国のコーヒーショップにおいて500円で提供されているコーヒー一杯に対して、コーヒー生産国の生産者に渡るのは10円未満だとされており、先進国企業による途上国の労働者の搾取の上で先進国の市場が成立しているという議論である。
貿易協定に労働基準についての規定を盛り込んだ最初の事例は、カナダ、メキシコ、米国の3ヶ国で1993年に締結された北米自由貿易協定(NAFTA)であるとされている。米国のトランプ前大統領は、NAFTAの規定が米国の利益に合致していないとして2017年から改定交渉を行い、2018年にNAFTAは「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」として改定されることになった。USMCAにおいては、特に自動車の原産地基準を満たすため「自給16ドル以上の工場で生産された自動車」という基準が採用されるなど、世界でもっとも労働基準の厳しい貿易協定となっている。
以上のように、貿易ルールの面から労働基準の問題が注目される事例が目立つようになってきたが、同時に、経済開発の面でも、特にSDGsの観点から労働基準・労働者の人権問題に対する注目度も高まり、これが貿易ルールの策定・貿易自由化交渉に影響を与えるようになってきている。
SDGsの目標8(働き甲斐も、経済成長も)は、「働きがい」という普遍的な概念が用いられているが、その背景には、長時間・劣悪環境・児童労働などにより生産された製品が国際市場において競争力を持つことへの批判の視点が盛り込まれたものとなっている。
労働基準の問題は、先進国から見た公正な競争環境としてのレベル・プレイング・フィールド(Level Playing Field)の確保の観点から重要である一方でと、途上国の側からは、先進国企業による搾取の問題として捉えられてきている。
特にレベル・プレイング・フィールド確保という論点は、台頭著しい中国の国際競争力を拡大させないための方便としても利用されるようになってきており、新疆ウイグル自治区における強制労働問題も、単なる人権問題というよりも、こうした国際競争の高まりの影響も小さくないといえよう。
~以下、(次号):「SDGsと経済安全保障の連動:先進国における社会的背景」に継続アップ~
(記事出典:小田正規 氏(日本大学国際関係学部准教授) 2022/10)
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