『日本から”ワサビ”が消えるかもしれない...-③』
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『日本からワサビが消えるかもしれない 最大産地で生産量が半滅、米紙が見た日本の「ワサビ危機」-③』
~(前号)からの継続アップ~
◆ワサビの品種改良の難しさ
公的機関の研究者と地元の農家は、気温が高くなっても育つ丈夫なワサビの品種を開発するため、交配の実験を進めている。
キュウリやトマトといった他の作物と異なり、ワサビで難しいのは、種を採取したり苗を育てたりするのに高度な技術が求められることだ。ほとんどの農家は、実験室や温室で苗を作る専門の業者に頼っている。新しい品種を交配してつくるには、複雑な受粉の作業と、何より時間が必要だ。
「すべての工程を終え、どれが最良で一番丈夫な品種なのかを見極めるにに、5,6年、もしくは10年ほどかかるでしょう」と、静岡県農林技術研究所でワサビの生産技術部門を統括する久松さんは述べる。
また、研究者によって何百回と実験が行われ、暑さに強い品種が生み出されたとしても、それが美味しくてよく売れるとは限らない。
静岡県山葵組合連合会で会長を務め、19世紀から続くワサビ田を代々管理している塩谷さん(65)は、県の研究所で開発された交雑種を植えてみたものの、「うまく育たなかったり、病気になったりした」と語る。
ワサビについて研究する専門家の中には、現代のワサビ農家は長きにわたり極く限られた品種しか栽培してこなかったため、環境に適応する品種を開発できる可能性が低くなってしまっていると論じる。
「現在、一種類のワサビが市場を独占している状態です」と、岐阜大学でワサビの栽培について研究している山根京子さんは述べる。それにより、丈夫な交雑種を作るのが難しくなっているのだと言う。
それに、新しい品種を試してみる段階になるまで、農家がワサビ栽培を続けているかどうかもわからない。引退する年齢になっても、後継者が見つからないままの農家もある。
ワサビ農家の4代目である渡辺さんは、40年前に東京の大学で化学の学位を取った後、嫌々ながら伊豆に戻ってきた。彼の息子は東京の大学に通っており、仕事も東京で探すようだと言う。
「ワサビが消えてなくなってしまうおそれがあります」。そう渡辺さんは訴える。
(記事出典:取材:「ニューヨークタイムズ」・COURRiER Japan 2022/02/20)
blog up by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木