『31年ぶり貿易赤字、(円高恐怖大合唱の盲点)-②』
(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (2294)
(円高)が進行すれば、自動車業界を筆頭に「収益悪化」を訴え、政府・日銀に円高進行
阻止に向けた政策実行を求めるケースが、このところ目立っている。
しかし、実際に2011年の貿易収支が赤字になったのであるから、輸入=円高で利益
を受けた企業もあるはずだ。そうした企業は声を潜め、目立たないようにしているため、メ
ディアへの露出も少ない。お茶の間のテレビを通じて経済ニュースに接している人々に
とっては、
「(円高)は不景気につながる」との印象を強める構図になっている。
〈個人消費支える要因に〉
存在しているはずの(円高メリット)は、どこに行ったのか?--。大きな流れの一つは、
原油やLNGガを大量に輸入した電力業界に流れ込んでいるとみていいのではないか。
2011年の為替レートは前年比7.2%の円高になっているが、もし円高になっていなけれ
ば、電力業界の支払いコストは円高相当分上乗せされていたはずだ。
電力各社がどのようなコスト計算をして、料金に反映させているのか?所管の経済産業省
は厳格にチェックして意見を表明すべきだ。
また、円高で最終消費財がどの程度の影響を受けているのか? データ等になるはっき
りした証拠はないが、一部医療品や家具などの輸入品価格の値下げなどで消費が刺激さ
れている面は否定できないと考える。 日銀の白川総裁は24日の会見で、「以外に堅調な
個人消費の背景には、薄く広く円高の結果があるだろう」との見解を示した。
ただ、高いブランド・イメージを武器に為替差益の値下げをせずに販売増を図っている欧州
系自動車や服飾品だけでなく、ワインやその他の輸入食料品の値下げもあまり進んでいな
い。「在庫品は、”ユーロ安が進む前に輸入した”」(ワイン輸入業者)という理由から値下げ
に消極的な企業が少なくない。だが、それは表面的な理由に過ぎず、そうしたケースでは、
輸入業者は、”円高を享受”しているのではないか?とすれば、輸入比率の高い企業の業
績は、今後伸びが期待できることになる。
円高の進行は、約1400兆円の個人金融資産の対外的な価値を高める。
そのことがある種の資産効果として、日本経済全体にプラスとして働く面も、
大きな経済の枠組みから見れば、注目すべきだ。
(記事:REUTERS コラム二スト 田巻一彦)
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木