(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (2292)
日本の貿易収支が、第2次石油危機の1980年以来、31年ぶりに赤字となった。
モノを輸出で稼ぐ日本の成長モデルが、歴史的な曲がり角に来たと考えるべきだ。
貿易赤字に転落した直接の原因は、東日本大震災と円高である。国内生産が大打撃を
受け、価格面の競争力も落ちた。 原子力発電所の事故で、火力発電所用の天然ガス
などの燃料の輸入も増えた。欧州を始め世界的な景気後退も影響している。
だが、こうした一時的な要因に目を奪われてはならない。 今までと同じような分野の輸
出品だけに頼っていては、コスト競争で中国など振興国に太刀打ちできないのは明らか
だ。 利益が縮む分野で消耗戦は続けられない。
円高、法人税の高さ、電力の制約など、日本企業の「六重苦」を和らげる取組みが必要
だ。 その一方で、
主力産業が輸出で利益を生み出せなくなった現実を直視しなければ
ならない。
輸出の両輪とされてきた自動車と電気の分野では、すでに貿易構造は大きく変わりつ
つある。 自動車では日産自動車や三菱自動車が主力の生産をタイやメキシコに移し
日本への逆輸入を本格化している。電気でもテレビなどの台湾、中国企業への委託生
産が増え、
日本は2011年も2年連続で家電の逆輸入国となった。
日本の貿易収支は30年間以上、黒字が続いたが、黒字額は縮小する傾向にあった。
反面、海外からの配当金などからなる所得収支は増え、所得収支の黒字は2005年
に貿易黒字を上回っている。
製造業が海外に軸足を移し、世界で稼ぐ姿を目指すのは自然な流れだ。このまま貿易
赤字が拡大して、経常収支の赤字に陥らないためにも、海外の子会社や投資先から受
け取る配当金、技術ライセンス料を日本に還流し、国内では新しい産業と雇用を伸ばす
循環を生み出す必要がある。
この10年間の日本の輸出のけん引役は、 (自動車)、(電気)、(機械)、(鉄鋼)の
4業種に限られている。主役が固定しているのは、産業の新陳代謝が滞っている証
である。
直接投資やM&A(合併・買収)で世界に打って出ると同時に、国内で付加価値が高い
事業の創造に務めるのが経営者の責務だ。
一方、政府はモノの輸出を重視する
旧来の関税政策ではなく、成長センターの
アジア地域を中心に、日本からの投資の舞台を広げる通商政策に力を入れるべきだ。
(記事:日本経済新聞・社説・春秋 2012/01/28)
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木