(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (2286)
『イノベーションのジレンマー技術革新が大企業を滅ぼすときー』
(クレイトン・クリステンセン) 著 玉田経平太(監修)、伊豆原弓(翻訳)
19日、130年の歴史を持つフィルム・カメラの代名詞もなっていた名門の「米・コダック社」
が破産申請をした(ロイター)。言うまでも無く、デジタルカメラの普及によって、主力事業の
フィルムの収益が大幅に悪化し続けたからだ。そしてこれも有名な話だが、デジタルカメラ
を最初に発明したのは他でもないコダックだったのだ。コダックは現在でもデジタルカメラ
に関連した多くの特許を保有している。
カメラ事業は、大変儲かるビジネスだった。カメラを買った後にも、人々はフィルムを買い
続けなければいけない。フィルムでも儲かり、そして写真を現像するときにも儲かる。
しかし、デジタルカメラではフィルムでも現像でも儲からない。
デジタル化はコダックのような大企業にとっては魅力のないものにうつったし、何より、自社
の強みを打ち消すような技術である。それゆえにコダックは、デジタルカメラの参入に遅れ
てしまい、キャノンやニコンなどの日本勢に負けてしまう。また同じようなフィルムメーカーで
あった富士フィルムは、フィルム製造に関連した多数の技術を、化粧品などの基礎素材に
応用し、うまくフィルム事業の衰退を新しい分野に置き換えていった。
このように最優秀な人材を集めるエクセレント・カンパニーが、新しい安価な技術にあっさり
と駆逐されてしまうことは珍しいことではない。 あの有名な『イノベーション・ジレンマ』であ
る。
1997年に初めて出版された本であるが、世界的なベストセラーとなり、経営学の古典とし
て必ず読んでおかなければならない一冊となった。一つの技術の発明により、それまで多
くの賞賛を集めていた大企業のビジネス・モデルが瞬く間に破壊されていくことがあるのだ。
少し前に日本の企業といえば、任天堂などがやはりエクセレント・カンパニーとして絶賛さ
れていたが、今ではアイフォンなどで提供される安価なゲームとの競争で先が見えなくな
っている。破産したリーマン・ブラザーズなどは、金融イノベーションの旗手だった。
ソニーやIBMなど、このような例は数挙に暇かかない。
個人的には新しい技術によって、古い大企業が破滅に追い込まれるのは大変素晴らしい
ことだと思う。それこそ資本主義社会が発展していくための成長痛に他ならないからだ。
会社というのは法的な無機質の器に過ぎず、大切なのは常に個人だから。
(記事:金融日誌・藤沢数希)より~
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木