『シャインマスカットと同じ構図に...愛媛の「門外不出の高級カンキツ」』ー⑥
(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (6042)
『シャインマスカットと同じ構図に...中国が愛媛の「門外不出の高級カンキツ」を自国で堂々と生産できるワケ』ー⑥
◆シャインマスカットの損失額は推計で100億円以上
「シャインマスカット」といえば、「農研機構果樹研究所ブドウ・カキ研究拠点」が、高温多湿の条件でも果実が割れにくい品種と認めて育成したうちの一つ。大粒で香りの良いヨーロッパブドウと、病気に強いアメリカブドウをかけ合わせることで、両方の良さを兼ね備えているブドウとして、2006年に品種登録を済ませている。
その大産地は、いまや日本ではなく中国である。農水省は、中国への無断流出による損失額を推計、2022年7月、年間100億円以上に達していると発表した。品種の育成者である農研機構に本来支払われるべき特許料(ロイヤルティ)=「育成者権」を、出荷額の3%として計算すると、この額になるという。
韓国にも無断で流出し、中韓で栽培が広がり、タイや香港などに果実が輸出されている。したがって、農水省が試算していない、輸出機会の喪失に伴う損失額も相当あるとみるのが自然だ。
中韓から育成者権を取るにはもう遅い。農研機構が青果物の輸出を想定しておらず、海外での品種登録を怠っていたからだ。海外で品種登録できる期限は、自国内で譲渡を始めてから6年以内。「シャインマスカット」はこれをすでに過ぎているので、海外での栽培はいまや合法であり、農研機構は育成者権の支払いを求めようがない。中韓で産地化されていることは、農研機構とそれを所管する農水省の手落ちだ。
国や地方自治体が税金を投じて育種をしながら、無断流出によって図らずも海外の農業を振興し、日本農業の足を引っ張る。日本の農政はこれまで、そんな悪循環を生み続けてしまった。
(参考):「カナダという巨大市場を失った日本」
カナダは長らく、国産柑橘類の最大の輸出先だった。カナダへのミカンの輸出の歴史は100年を超えている。「クリスマスオレンジ」として、クリスマスの時期に日本産ミカンを買い求めると言う習慣は、現地=バンクーバーですっかり定着していた。
カンキツの生産量がピークに達した1970年代には2万トンを超えるミカンをカナダに輸出しており、これはミカン輸出量全体の8割を超えていた。
ところが、カンキツの輸出量は近年急速に減っている。2011年に2165トンだったのが、2021年に209トンと10分の1以下に落ち込んだ(公益財団法人 中央果実協会:「世界の主要果実の貿易概況2022年版」より)。全輸出量に占めるカナダ向けの場合も2011年の8割から、2021年の1割と急落してしまった。
カナダ向けが減った分、輸出全体もしぼんでいる。2011年に2,645トンだったのが、2021年に1,856トンと、10年で3割減った、日本はカナダと言う巨大な市場を失ってしまったのだ。
~いまや、バンクーバーで売られている「クリスマスオレンジ」は中国産である~
(記事出典:窪田新之助 氏(農業ジャーナリスト) / 山口亮子 氏(ジャーナリスト)
PRESIDENT Online 2023/01/09)
blog up by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木