(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (3265)
中国では、オーストラリアから牛乳が空輸され、地元産の4~5倍の価格で販売されているいう。日本の安心・安全の酪農製品をアジアに売り込むことは十分に可能だろう。輸出を促すには、海外からの輸入自由化も必要だ。指定団体制度は段階的に廃止し、関税は徐々にひきさげていくことが望ましい。
バターなどは海外の3倍以上という高い価格を消費者に押し付けることを止め、安価な輸入品を提供し、国産品は品質の高い飲用乳やチーズなどでブランド化を図る。農家の創意工夫が、より評価される仕組みが必要だ。
米国やEUでは、関税を課すことで高い国内価格を維持する「価格支持」から、補助金を払うことで農家の所得を維持する「直接支払い」にシフトすることで、自由な輸出入と農業保護を両立させている。
例えば、EUは1970年代に「バターの山、ワインの湖」というほどの過剰生産に悩まされた。このため農家への「直接支払い」に軸足を移した。この結果、農産物は国際価格に近づき、消費者負担は減った。「直接支払い」の受給には、環境保護や土壌保全などの要件を満たす必要があるため、農家の集約も進んだ。
日本で「価格維持』が続いているのは、農協が手数料収入にいぞんしているからだ。「価格維持」では、消費者にも大きな負担がかかる。
輸入自由化は、必ずしも農業の衰退を意味しない。日本では1991年に牛肉の輸入が自由化された。だが「和牛」は現在も好調だ。国内の牛肉生産量は、1990年度から2013年度にかけて、約39万トンから約36万トンに減ったが、「和牛」は約14万トンから約16万トンに増えている。
1995年にGATTがWTO(世界貿易機関)に改組された際、細川内閣は日本の農業保護のために6兆円もの事業費を執行した。だが農協を中心とした「価格維持」という政策を変えなかったため、日本の農業は、依然として納税者負担と消費者負担の両方を強いている。
農業を弱者とみなす保護政策は”弱者を再生産”し、弱者の状態をさらに悪化させる。日本の農産物は、国内的に重要な品目が高関税に守られているため、内向きな対応に終始し、輸出機会が失われてきた。また日本の農政は、退出すべき零細農家を温存する政策をとることで、伸びゆく人材の成長機会を奪ってきた。さらに農地所有を農家に限り、外部からの参入を規制してきたため、農業投資が過少になっている。本来、TPPへ参加は、こうした日本農業のトレンドを断ち切る絶好の好機だった。
これまでの仕組みは、もう続けられない。その事実から目を背けるべきではないだろう。
(記事:本間正義氏・東京大学大学院農学生命科学科教授・PRESIDENTonline BLOGOS 2015/07/29)
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木