『最近の日本に対するアンビバレント(二律背反的)な見方』
(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (3199)
「昨今のテレビ番組には、必要以上に日本を悲観した番組と、日本を礼賛する番組が、増えているとの印象があるが、自らの強みと課題、日本を取り巻く環境やチャンスなどについて客観的に考え、知ることが大切であろう。この点で、政府、マスコミ、教育・研究機関の責任はより重要になっていると考える」。
(平賀富一 氏 ニッセイ基礎研究所 保険研究部首席研究員 アジア部長)
ー[ZUU Online 2016/07/18]-
『アジア研究者の一視点:「最近の日本に対するアンビバレント(二律背反的)な見方について思うこと』
「国際会議等での日本の存在感の低下」と、「日本に関心を持ち、日本製品・サービスを信頼するという人々の増加」、というコントラストは非常に印象深いと感じている。
1986年当時にタイは、一人当たりのGDPが約800ドルでの水準で、約17,000ドルに達していた我が国とは比べるべくもなかった。さらに、既に東南アジア地域における先進国になっていたシンガポール(1986年の1人当たりのGDPは15,000ドル)へも、日本は、コンピューターの供与やその活用に関する技術指導の援助を行っていた。日本はアジアにおける絶対的なリーダーであり、当然ながら、国際会議など様々な場でも話題をリードしていた。
一方、アジアの国々では、最大の経済ショックとなった1997~1998年のアジア通貨・金融危機などの厳しい局面を経験しながらも着実な歩みを進め、NIEs(韓国、香港、台湾)、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国、中国・インドなど各国・地域が成長を遂げた。
今や、経済規模(名目GDP:2016年4月IMFデータ)で、中国は、我が国の2.7倍(2015年)という大差で世界第2位の経済大国となっている。
また、20年前には、我が国が、欧米諸国とくらべても世界最高水準であった一人当たりGDP(2016年4月IMFデータ)では、アジア地域において、シンガポール、香港が日本を上回っている。
さらに言えば、アジア諸国・地域の中で、20年前と同水準やそれを下回る水準にあるのは日本だけであることがわかる。
かつて、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われ有頂天になっていた頃の傲慢さは忘れてはならないが、それを経験した世代には、その苦い経験から、必要以上にリスクを恐れチャレンジが進まないということがあるように思う。
一方、生まれ育って以来、日本がアジアや世界のトップリーダーであった時代を知らない若い世代に対しては、日本の良さや強みと、アジアなど成長地域のダイナミックな動きとそこに存在するチャンスを認識してもらうことが大切であろう。そのためには、実際に多くの若者が、現地の空気や匂いに触れ、現地の人と話し、自らを感じてもらうことが重要と考える。
(平賀富一氏 ニッセイ基礎研究所・アジア部長)
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木