(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (3065)
昨年度の第49回通関士試験・実務科目の「輸入申告書作成問題」においては、施行されたばかりの「日・オーストラリア経済連携協定」におけるEPA税率ー関税割当に関する内容が出題され、多くの受験者が面食らったことと思われます。
この「経済連携協定に基づく関税割当制度」の規定は【関税暫定法第8条の6】によるものです。
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【関税暫定措置法】は、(特恵関税制度)や”暫八(ざんぱち)”と呼ばれる(加工又は組立てのため輸出された製品の減税)のみが重要視されていますが、【関税暫定措置法第7条】の(農畜産物に対する特別緊急関税)の各条文も決して無視しないでください。(テキストではこの第7条を記載省略しているものもあります。)
・関税暫定措置法第7条の3:輸入数量を基準とする特別緊急関税
・関税暫定措置法第7条の4:
輸入価格を基準とする特別緊急関税
[対象品目]米、大麦、小麦、
乳製品、でん粉、乾燥豆、落花生、こんにゃく芋、まゆ、生糸など、
・関税暫定措置法第7条の5:牛肉に係る関税の特別緊急関税
・関税暫定措置法第7条の6:豚肉等に係る関税の特別緊急関税
・関税暫定措置法第7条の7:
経済連携協定に基づく関税の緊急措置
『バター不足、今年度も 3年連続の緊急輸入へ 農水省』
農林水産省は31日、バター不足が今年度も見込まれるとして、6千トンを緊急輸入すると発表した。緊急輸入は3年連続6回目。
酪農・乳業の業界団体「Jミルク」が同日発表した需給見通しによると、今年度のバター国内生産量は前年比3.4%減の6万4千トンに対し、需要は前年度比0.9%増の7万5500トン。不足分のうち、ウルグアイ・ラウンドで決められた義務的輸入枠で7千トンを輸入することがすでに決まっており、緊急輸入で不足分はなくなる計算だ。国産牛乳からは飲料の牛乳を優先的につくるため、バターなどに回す分が不足しているという。国内酪農家の保護のため、バター不足分は国が輸入し、国内価格を維持する仕組みになっている。(朝日新聞・2016/06/01)
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日本は平成5年12月に妥結した多国間貿易交渉(ガット:ウルグアイ・ラウンド)における国際約束に基づき、平成7年度以降、牛乳換算で年間13万7000トンのバター等の指定乳製品を輸入することになっています。これをカレント・アクセス輸入といい、(独立行政法人)農畜産振興機構が一元輸入をしています。
バターの輸入制度には特殊な関税割当制度が適用されています。一定の数量までは一次税率(関税35%)が課せられ、その枠を超えると
二次税率(29.8%∔179円/Kg-暫定税率):(29.8%∔985円/Kg-協定税率)※[従価/従量税率]が課せられます。一次税率の対象は600トンと極めて限られた数量で、これは機構が国際航空会社の機内食用などにあらかじめ割当てます。
民間業者は機構にバターを買い入れてもらい、農水大臣が定めた1Kgあたり806円の輸入差益(マークアップ)を上乗せされた価格で買い戻さなければなりません。
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木