(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (2959)
「産業の米(コメ)」と言われてきた鉄。土木、建築、造船、自動車、家電と、その国の経済発展の基礎となる原材料”鉄”があり続けてきました。途上国にとっての経済振興とは「鉄の自前確保」でした。
日本も含むアジアの鉄鋼メーカーへ冬の木枯らしが吹きつけています。
(参考:10月29日 No.2927において、関連内容をアップ済み)
中国の鉄鋼大手である宝山鉄鋼(上海市)が発表した今年7~9月期決算の売上高は同9,9%減の1415億人民元で、最終損益は9億元(約171億円)の赤字※(昨年同期比は18億元の黒字)だった。
国内経済の減速による需要減を受け販売量が減ったほか、人民元安に伴い財務コストが膨らみ、営業損益は15億元の赤字※(前年同期比は22億元の黒字)に陥った。
中国国家統計局によると、2014年の中国の粗鋼生産量は日本の7倍超の8億2270万トン。今年1~9月の粗鋼生産量は6億900トンと前年同期比に比べ2.1%減少した。需要は生産以上に落ち込んでいるとみられ、販売量を確保するための激しい価格競争が起きている。
影響は中国国内だけにとどまらない。国内の需要不振を受け、中国製鋼材は”安価”で大量に海外に溢れ出た。
一昨年(2013)に6200万トンだった中国の鉄鋼輸出は、昨年に9400万トン超と過去最高を記録。今年は通年で1億トンを越える見通しだ。日本の2014年の祖国生産量は約1億1千万トンで、それに匹敵する量が中国から輸出される見通しだ。
中国製鉄鋼の平均輸出単価は2015年上半期(1~6月)に620ドル/1トン(トン当たり約7万6千円)と、昨年同期に比べ2割以上安くなった。
そのため、中国の輸出先の国でも、市況の悪化と、それに伴う鉄鋼メーカーの業績悪化がみられる。
例えば韓国では大手鉄鋼メーカーのポスコの今年7~9月期の連結最終損益は6582億ウォン(約658億円)の赤字※(昨年同期比は2240億ウォンの黒字)だった。鉄鋼価格が下落した影響で、売上高が14%減の13兆9960億ウォンにとどまったうえ、ウォン安に伴う為替差損も膨らんだ。
自動車用鋼板などの技術力があり、高付加価値製品に強みを持つ日本メーカーは、比較的競争力があるとみられていたが、それでも打撃は避けられない。今年の4~9月期の営業利益は、「新日鉄住金」が前年同期比27%減、「JFEホールディングス」が40%減と苦しんでいる。
今年9月には中国・宝山鋼鉄が広東省で年産1千万トン級の大型製鉄所を稼動した。供給過剰が解消しない一方で、中国などの需要回復は不透明だ。
採算悪化で淘汰の波にのまれる前にどう差異化を進めるか。アジア市場の成長を実感できないまま、鉄鋼各社の終わりの見えない戦いが続く・・・。
(記事:日経産業新聞・上海、ソウル 2015/10/31)
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木