『インコタームズ2010年版・(DAP),(DAT)』
(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (2531)
表題とは反し、前号において「(DAP)や(DAT)は、国際複合一貫輸送形態を対象としているだけに適正な問題設定が難しく、輸出申告書はまだしも、課税価格に影響する輸入申告書での出題は避けるのではないでしょうか?」とアップしていますが、その理由がどこにあるのか? この記述の判断に悩む受験者も多いと感じます。
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「インコタームズ2010年版」は、海上輸送・国内輸送、船舶、航空機、貨車、トラックなど、場所、輸送手段を問わず、国内外のあらゆる輸送手段を将来的に想定された貿易条件であり、中でも(DAP)と(DAT)は、新規に創設された、創設からまだ3年目の新しい貿易条件で、業界での普及=その内容の正しい認識は一般的とは言えません。
また、(シベリア・ランド・ブリッジ)とか(アメリカ・ランド・ブリッジ)などの「国際複合一貫輸送」を利用して、我が国←→英国等間の輸送での厳密な(DAP)の理解は、かなり難しいです。
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(関税法施行令第69条)において規定する申告価格は;
・「輸出申告価格は
FOB価格」
・「輸入申告価格は
CIF価格」
とする。というれっきとした法令上の規定が定められています。
この「FOB・CIF」という=旧態の
”在来船での海上輸送形態での貿易条件”を関税法上で温存したままでの現状で、(DAP)等の問題を出題してくることは、自らが”墓穴を掘る”結果を招く要因をはらんでいます。
一般貨物海上輸送の8割以上が「コンテナ船」による輸出入という現状においても、なお、在来船型貿易条件の(FOB・CIF)を申告価格とする矛盾は大きく、運送保険上の解釈や、輸出者/輸入者間の運送費分担において、「THC=Terminal Handling Charge」コンテナ・ターミナル内取扱料を中心とする、様々なトラブルが増大している事実にあります。
しかしながら、業界で長年に使用されたきた(FOB/CIF)による貿易条件は、業界に根強く定着しており、その改革は容易ではありませんが、海外の大手シッパーのインボイスでは、2010年版のインコタームズを表記したものが、段々と増加している現状にあります。
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取り敢えず、コンテナ船海上輸送形態の(FCA)や(CIP)・(EXW)や(DDP)辺りの通関士試験問題の出題によつて、順番に(新たな知識・解釈を持つ若い合格者)を育てた上での(法令改正)を狙うしか術がないのが実情ではないのでしょうか? その意味では、受験者である皆さんへは、将来の通関行政への大きな期待がかけられている、とも言えますし、その期待の分だけ、通関士試験は難易なものとなります。
重ねて言えば、法令上の(FOB/CIF)と、現状のコンテナ輸送での(FCA/CIP)との違いの矛盾は、大きな誤差を温存させたままで、決済・通関・納税が処理されているのが事実です。
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木