(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (4346)
『東芝解体 電機メーカーが消える日』 大西康之著 (講談社)
[電気メーカーより深刻な”病巣”とは?]
~前号よりの続きーだが、日本の電機産業にはこれより深刻な”病巣”がある。東京電力が家長として君臨し、崩壊寸前の東芝を正妻とする「電力ファミリー」だ。
戦後の電力インフラは通産省(現・経済産業省)と電力会社が全体図を描き、東芝、日立、三菱重工など、重電メーカーが設備を作った。巨額出資を支えたのは「電気料金」と言う名の”税金”。こちらもNTTの事例と同様、電気料金は設備投資と言う名目で電力ファミリーに流れた。
日本が着々と通信・電力インフラを整えていった高度経済成長期、そして米国とソビエト連邦が一触即発だった東西冷戦の時代において、「電電ファミリー」と「電力ファミリー」は日本の経済の柱として機能していた。米国は、日本の共産化を防ぐ意味もあり、日本企業に半導体事業などの先端技術をタダ同然に教えた。日本がテレビや自動車などを作れるようになると、それを大量に輸入した。反共防波堤である日本に早く豊かになって欲しかったのだ。米国内では厳しい競争政策を取っていたが、電電ファミリーや電力ファミリーによる”談合”には目をつむった。
高い電話料金や電気料金で潤ったファミリー企業が、ダンピングまがいの値段で米国に半導体を輸出しても決して文句を言わなかった。
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しかし1989年にベルリンの壁が崩れ東西冷戦が終わると、状況は一変する。米国は日本を庇護の対象ではなく、対等な競争相手と見なし、日本の総合電機の力の源だった”談合構造”の切り崩しにかかった。
それが「貿易摩擦」であり、「日米構造協議」だ。この日米構造協議の過程で始まったのが”通信自由化”なのだ。これにより日本の電機産業は弱体化した。
通信では新規参入した新電電グループとの価格競争が本格化したため、NTTの設備投資は2005年には2兆円まで減った。電力ファミリーの設備投資もピークの5兆円から2兆円を割り込むまで落ち込む。こうなると電気業界はたまったものではない。NTTや東電に代わる新しい収益源を探して右往左往していた各社に追い打ちをかけるように、2008年にリーマン・ショックが起こる。液晶テレビやデジタルカメラが売れなくなってしまったのだ。そして、2011年3月、東日本大震災が起こる。言わずもがな、東電は巨額の損害賠償を背負い、国有化によってなんとか生きながらえている状態。
”家長を失った電力ファミリーは、電電ファミリーと同様、崩壊を始める” そして東芝は粉飾に手を染め始めた。
「電電ファミリー」と「電力ファミリー」という、戦後の日本の電気産業を支えてきた2つのピラミッドが崩壊したことが、電気全滅の最大の原因だった。
(記事:いのうえひろゆき 「読みたい本がここにある」 2017/06/19)
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この「電電ファミリー」、「電力ファミリー」を構築したのは、どこか?誰か?
そして、それは”ニッポンに合った「和」に従うものなのか? 欧米の借り物で、”置き去りにしたものであるのか?
戦後日本の総再構築という観点からすると、「アベノミクス」には、大きな一つの意味があるように感じる・・。
blog up by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木