『「他法令の証明・確認)と「通関士のスキル向上」』
(貿易ともだち)さん、みんな(がんばるチャン!)してるかな? (4288)
前号では、養殖漁業におけるウイルス疾病蔓延の防御強化を目的とする昨年7月改正施行の「水産資源保護法」の話題を取上げました。
通関業者にもよりますが、一般的に言って、通関士の日々の通関業務は、「特定顧客の特定貨物と、その業務内容が限定的な内容に固定された同様な通関業務を”惰性的に繰り返す”という場合が多いと思います。都市部・大手通関業者においては、特にこの傾向が強いのではないでしょうか?
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しかし、「この企業は何を作る会社」・「この会社は、何の業種」という従来の固定的・限定的な狭範囲で企業をとらえることはできません。「植物工場」で、農地(土)がなくても、倉庫内で野菜やキノコが栽培されたり、木材会社がバイオ火力発電所を併設して、電力事業に乗り出す、あるいは、建設・土木企業が、「養殖業」に乗り出すといったニュースが一般的に聞かれる現状です。
「家電業界」が、農業へ、「造船業」が養殖漁業へ、何らの不思議な展開ではありません。極端な例では、かつて、米国の「コダック社」と世界のフィルム業界を2分した「フジフィルム」の今の実態は、薬品企業・化粧品企業であり、他方では園芸種苗企業、サプリメント企業等のマルチ生産企業ですよね。
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つまり、今まで”通関士が依頼を受けて行っていた通関業務”の顧客から、突然に従来とはまったく異なる業種や貨物の輸出入の相談を受け、その通関業務を行っていかなければならない可能性は極めて大きいのです。
企業の「多角経営化」ばかりか、経済・生産手段のグローバル化は、目的とする輸出入貨物のみばかりでなく、それに付随して、好まざる”負のグローバル化”も避けて通れない現状となっています。「グローバル化」とは、国境の無いがごとくの経済・生産活動”を意味しますが、それに伴い、各国・各地域の動植物、病原菌も一緒にグローバル化してしまいます。「ヒアリ(火蟻)」や「ツマアカスズメバチ」の侵入に係る「特定外来侵入生物法」、「水産資源保護法」や船舶の「バラスト水のプランクトン」等々~・・。
これら”好まざる負のグローバル化”での国際蔓延を防ぐため、数々の国際条約・規定が締結され、我が国では、関税法第70条においての「他法令の証明確認」の規定により、税関が”水際取締り”の一つとしてその輸出入通関時にチェックします。
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「通関士」は、これら多種多様な「他法令の証明・確認」を適正・迅速に遂行していき顧客から従来通りの信頼を維持していくためには、「限定的な貨物の通関のプロ」という狭範囲の専門家では通用しません。「ありとあらゆる貨物」、「多種多様な輸出入形態」に対応できる”マルチな通関士のスキルアップ”が強く求められる新たな時代に突入しています。
特に、前号で取上げた「水産資源保護法」に係る輸入貨物は、”生きた稚魚や卵”であり、日本に到着して申告時の”他法令の発覚”で、もたもたと通関していては、死滅し、顧客に多額な損失を発生させ、通関士・通関業者に対する顧客の信用は一度に失います・・。
by Gewerbe 「貿易ともだち」 K・佐々木